尿は膀胱での貯留と排出がありそれらに関与する過程に障害が起きた時を「排尿障害」という。
排尿制御の喪失を尿失禁と呼びます。膀胱の機能には平滑筋の働きがとても重要であり,排尿筋と
呼ばれる平滑筋があります。尿を排出する管は膀胱三角部と近位尿道で構成されています。尿が
溜まっている時の膀胱は低圧で高容量の容器となり,尿道は高圧の障壁となる。尿の排出時は
膀胱は筋肉製ポンプとなって又,尿道は低圧の導管として働く。
  膀胱と尿道は自律神経と尿道の相互作用の組み合わせで成り立っている。排尿には交感神経系と
副交感神経系が関係している。
 
       
  ◇排尿障害病因 
 
     ◇ 上位運動ニューロン性排尿障害
  椎間板疾患,腫瘍,外傷といった端から第7腰髄分節までの病変は,排尿筋反射消失をもたらし,
外尿道括約筋の反射亢進と緊張亢進を引き起こす事がある。この為,排尿の随意的制御が欠如し,
膀胱圧迫による排尿操作が困難になる。損傷後数週間すると,脊髄反射が回復し,膀胱が限界容積
に達する事によって,不随意的排尿が生じる。この時期になっても,外尿道括約筋は緊張亢進状態の
ままである。尿道に流出抵抗があり,尿が完全に排出されない為,膀胱内には尿が残存する。  
     ◇ 下位運動ニューロン性排尿障害
  仙髄分節,神経根,末梢神経の損傷は,排尿筋の反射消失をもたらす事があり,尿道括約筋の反射
消失が生じる事も生じない事もある。このような損傷の原因となる疾患には,椎間板疾患,馬尾症候群,
仙腸骨脱臼,仙尾骨の骨折及び分離,腫瘍がある。排尿筋のアトニーは,膀胱の過膨張をもたらし,大量
の残尿による膀胱容積の増大が生じる。陰部神経が損傷を受けている場合には,外尿道括約筋は,機能
不全状態になる。 下位運動ニューロン性排尿障害では,膀胱が膨満状態になり,膀胱内圧が上昇すると,
括約筋は排尿の自制を維持する事が出来ず,尿の漏出が生じる。                                                              
◇ 排尿筋ー尿道共同運動障害
  この疾患では,排尿筋反射の開始によって排尿が起こるが,続いて尿道括約筋の収縮が不随意に
生じる。この疾患は毛様体脊髄路の病変によって生じる。又,尾側腸間膜動脈神経節より頭方の病変,
又は尾側腸間膜動脈神経節自体の病変によって,尿道の平滑筋と横紋節に対する交感神経刺激の
増大が生じる事もある。
     ◇ ホルモン反応性尿失禁
  ホルモン反応性尿失禁は,主として不妊手術を受けた雌犬に認められている。手術を受けてから症状が
発現するまでの期間は様々である。この疾患の病因は不明であるが,尿道の粘膜及び筋組織の適切な
維持と機能にはエストロゲンが必要であり,このホルモンの主要な出所を切除する事によって尿失禁が
生じる事があると考えられている。ホルモン反応性尿失禁は去勢手術を受けた雄犬にも認められている。
     ◇ 尿道機能不全
  この疾患では,犬が緊張状態になると,不随意な排尿が生じる。この疾患の原因は,尿道平滑筋の
機能不全又は尿道の位置異状であると考えられている。
     ◇ 切迫尿失禁
  切迫尿失禁では,排尿筋が不随意に収縮し,少量の尿が排泄される。この疾患は膀胱の炎症や
膀胱に対する刺激によって生じる。又,長脊髄路や小脳の病変によっても生じる事がある。
    ◇ 過膨張による排尿筋アトニー
  この疾患は,機械的又は機能的な尿路閉塞の結果として生じ,排尿筋の密着帯の分離が
もたらされる。この為,排尿筋の収縮力は低下し,有効に作動しなくなる。機械的尿路閉塞の原因
には,尿道閉塞,膀胱及び尿道結石,膀胱三角部や尿道の腫瘍,重度の膀胱炎,尿道狭窄,
前立疾患がある。機能的尿路閉塞の原因は,尿道に対する過度の交感神経刺激であり,この結果
として尿道の緊張が亢進する。機械的又は機能的尿路閉塞の結果,膀胱内圧が尿道抵抗を上回る
まで尿量の増加が生じる。膀胱内圧が尿道圧を上回れば,排尿筋 が有効に収縮しない為,尿道の
滴下が生じる。
    ◇ 奇異性尿失禁
  この疾患では,尿路閉塞に伴って尿の滴下が生じる。この疾患は尿道結石,腫瘍,尿道炎によって
生じる部分的尿道閉塞の結果として引き起こされる。過膨張による排尿筋アトニーとの相違は,疾患の
持続期間が短く,排尿筋アトニーが永続しない事である。
    ◇ 異所性尿失管
  異所性尿失管は尿管が遠位尿道や膣といった異常な位置に開口する先天性形成異状であり,
持続的又は間欠的な尿の滴下を引き起こす。 
 
   
 
※ 排尿障害には,不妊手術,腹部,神経系手術,泌尿器系疾患,外傷などによる病歴なども
       関係している場合があるようです。
 
参考文献  サウンダース小動物臨床manual
         犬の診療最前線      
  

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