☆ケンネルコフ 
  犬伝染性気管気管支炎,上部気道感染症候群,喉頭気管気管支炎,犬舎病などさまざまな病名が
つけられている。上部気道炎を示すきわめて伝染性の強い呼吸器疾患である。この呼吸器病群に
関与する病原体は、犬アデノウィルス2型,犬パラインフルエンザウ ィルス,犬ヘルペスウィルス,
レオウィルスなどのウィルスと細菌,特に気管支敗血症(Bordetella bronchiseptica)やマイコプラズマ
といわれている。主に問題となるのは犬アデノウィルス2型,犬パラインフルエンザウィルスならびに
気管支敗血症菌である。感染経路はエアロゾルで、潜伏期間は4〜8日間といわれている。臨床症状は
さまざまで、乾性の強い咳を主徴とし微熱,漿液性鼻汁などが認められることもあるが、おおむね一般状態
はよいものが多い。しかし、中には著しい気管支肺炎i進行し、死の転帰をとる症例もある。  
 

       ☆犬パラインフルエンザ
  パラインフルエンザウィルスは、パラミクソウィルス科,パラミクソウィルス属に属するウィルスで、
5つの型がある。犬パラインフルエンザは、このうちの5つの型に属するウィルスで、呼吸器感染症の
原因となるといわれている。この犬パラインフルエンザウィルスは通常、単独では典型的な臨床症状を
引き起こす事はないとされている。しかし実験的には、非経口的(注射)接種では臨床症状を現す事は
な いが、大量のウィルスを噴霧や点鼻法で経鼻接種すると約50〜60%に咳を伴う気管・気管支炎症状が
認められ、他の健康犬にも容易に伝播されるという。1975年,野外における本ウィルス疾患の発生で、
わが国で初めて分離同定に成功している。この症例の臨床症状は食欲不振,発熱,膿性鼻汁,呼吸困難,
下痢であったという。剖検による主病変は化膿性肺炎で、E‐Scherich ia coli,Staphyl ococcus aureus,
Domonas aeruginosaが分離されている。一般に野外では、犬パラインフルエンザウィルス単独による疾患を
経験す る事はまれであり、多くは犬アデノウィルス2型などその他のウィルスや細菌による混合感染で
ある。したがって、前項のケンネル・コフ などの気管・気管支炎症候群の引き金的役割を持つウィルスの
一種として考えるべきものであろう。このウィルスは、リポプロテイン‐エンベローブを持つ比較的大きな
RNAウィルスであるため不安定で、体外での長期生存はなく、化学的消毒剤で簡単に不活化される。
 
       ☆気管虚脱
  気管が緊張を失った状態、あるいは気管の背側膜性壁が伸張・弛緩した状態で、多くの場合背腹方向の
扁平化を認める病態をいう 。特に中年齢層から瘻年齢層の肥満状態にあるトイ手ミニチュア種(トイ・プードル,
ヨークシャー,ポメラニアン,チワワなど)に多い.原因はまだ明らかにされていないが、遺伝的素因や栄養的
素因(肉100%食など),神経学的素因などが示唆されている。また、慢性気管支炎などの気道疾患が原因
して硝子気管軟骨や気道筋,結合織が侵され、その結果気管が脆弱して扁平化を呈する場合もある。症状は
喘鳴を伴う努力性呼吸と慢性の乾性咳嗽が主徴である。特に激しい運動や興奮,機械的な気管の圧迫の
差異採食,飲水時などに咳嗽が発現し、著しい場合にはチアノーゼを伴う呼吸困難を呈することもある。
通常虚脱部位が頸部気管にある場合には吸気性の呼吸困難を認め、胸部気管の場合には呼気性の呼吸困難
を呈する。
 
      ☆気管・気管支内異物
  気管・気管支内の異物としては、おはじきやビー玉,針,果実の種,植物の芒(のぎ)などがある。
子犬の場合には遊戯中に誤嚥す る場合が多い。また猟犬などでは野外で植物の芒を吸引した場合に
認められる.異物が吸引された直後の症状としては、急性の著しい発作性咳嗽が認められ、異物が大きい
場合には閉塞性の呼吸困難を示す場合 もある。その他嘔気や喘鳴,努力性呼吸を示す。植物の芒や種子
など小さい異物の場合には、上記の急性症状を示した後、しばらくは 無症状状態が続き、その後停滞した
異物による炎症や閉塞によって咳嗽を主とした症状を現す.さらに無気肺や吸引性肺炎,膿胸など重篤な
合併症が続発することもある。  
 
 
 
                   犬の診療最前線・interzoo より         

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