☆膿皮症   
  膿皮症とは細菌による感染性皮膚症である。犬ではその発生頻度が極めて高く,起因菌として皮膚に
常在するStaphylococcus intermediusの分離率が極めて高い。
 
    ☆皮膚糸状菌症   
  皮膚糸状菌症はケラチン好性のMicrosporum(小胞子菌属),Trichophyton(白癬菌属),
Epidermophyton(表皮菌属),による表在性真菌症である。犬の皮膚糸状菌症ではM.canisと
M.gypseum(好土性)の感染が比較的高率にみられ,ときに,Trchophyton mentagrophytesが分離される。
皮膚糸状菌は犬の常在菌ではないが,一時的な寄生として体表に分布する事がある。
 
   ☆マラセチア関連皮膚炎  
  マラセチアは好脂質性の分芽型(二形性)酵母菌であり,犬にはMalasseziapachydermatisが寄生している。
これは過去にピチロスポルムpityrosporum canissと呼称されていた。犬では,皮膚,耳道,肛門,肛門嚢,
膣,口吻に常在している事が知られている。これまでマラセチアの病原性が強調される事はあまりなかったが,
最近ではマラセチアの増殖により皮膚炎が生じると考えられている。いわゆるマラセチア皮膚炎の臨床像は,
本質的に脂漏性皮膚炎に合致しており,いずれも抗真菌剤が有用である事から,マラセチア皮膚炎と
脂漏性皮膚炎の異同については検討の余地があると思われる。
 
    ☆ニキビダニ症   
  ニキビダニ症はニキビダニが毛包や脂腺内に多数寄生する事により発症する皮膚症と理解されている。
犬にはdemodex canisが常在し,その増殖には宿主免疫の低下が関与していると推測されている。
しかし本症の病理発生は十分に解明されておらず,組織像からは種々の宿主免疫応答が関与していると
思われる。なおアラカス,毛包虫はいずれもニキビダニの俗称であり,正式な学名でないため用いないほうが
よい。
   ◇発症要因
1,幼犬では未熟な皮膚バリア機能が素因となっている。誘因として,急速な発育,
   ワクチン,粗悪な食餌内容,環境に対するストレス,内部寄生虫感染などが関与する。
2,成犬では発症の背景として,薬剤の使用(ステロイド剤,免疫抑制剤,抗癌剤)や
  ストレス(過剰な使役,発情,分娩,手術など)などが関与する。
3,老犬では発症の背景として,内科疾患(悪性腫瘍,内分泌疾患,肝疾患,衰弱疾患)
    や加齢に伴う皮膚生理機能の低下が関与する。
 
    ☆疥癬   
  犬の疥癬はイヌセンコウヒゼンダニSarcoptes scabiei var,canisによる伝染性の皮膚症である。
本症は地方病的に発症する事が多い。疥癬には,多数の寄生を認めるノルウェー疥癬と虫体の検出が
困難な通常疥癬がある。
    ◇イヌセンコウヒゼンダニの特徴
1,生活環には17〜21日間を要する。
2,成虫は3〜4週間生存するが,宿主を離れた場合24〜48時間しか生存できない。
3,動物間の感染は通常直接的に成立する。
4,ヒトへも一過性に感染する。
 
    ☆ツメダニ症 
  ツメダニ症はイヌツメダニCheyletiella yasgriによる伝染性の皮膚症である。ツメダニは皮表および
角層に寄生し,機械的な刺激およびアレルギー反応に起因した症状を発現させる。
   ◇イヌツメダニの特徴
1,生活環には5〜6週間を要する。
2,皮表,角層に寄生,宿主リンパ液を摂取する。
3,宿主から離れても暖かく乾燥した環境では3日間,涼しい多湿の環境で18〜21日間生存する。
4,感染は直接的な接触のみならず,ノミ,シラミ,ハエによる媒介,あるいはクシなどを介
   した間接的な接触により成立する。                                 
 

              
 犬の診療最前線・interzoo より 

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