☆播種性血管内凝固   
  播種性血管内凝固症候群(DIC)は,種々の原因により,極端な血液凝固亢進状態を生じ,
全身の主として細小血管内に血栓の多発を来たし,消費性凝固障害consumption coaguiopathyを呈する
症候群である。本症候群では,フィブリンの形成と溶解が持続的に生ずる結果,フィブリンの形成に必要な
フィブリノゲンをはじめとする種々の凝固因子や血小板が消費されて低下する事で,血栓傾向とは逆の現象
である出血傾向が発現する。DICは,臨床症状と疾患の持続状況により,急性型,亜急性型およびびまん性
型に分類され,発現機序により内因性凝血機序の活性化による場合と外因性凝血機序の活性化によるもの
とに分類できる。なお,本症候群は一次疾患ではなく,必ず基礎疾患があって,その合併症として発生する。
   ◇原因
DICの原因となる基礎疾患はさまざまであるが,犬における代表的なDICの関連疾患としては下記の
疾患が報告されている。
1,腫瘍(転移した甲状腺癌や乳癌,血管肉腫,リンパ性白血病,骨髄増殖性疾患など)
2,感染症(細菌性敗血症,レプトスピラ症,犬伝染性肝炎,バベシア症,犬糸条虫症など)
3,炎症(化膿性気管支肺炎,化膿性皮膚炎,出血性胃腸炎)
4,その他(ショック,熱射病,蛇咬症,肝硬変,アフラトキシン中毒,自己免疫性溶血性貧血,
寒冷凝集素疾患,胃拡張‐胃捻転症候群,うっ血性心不全,弁線維症,横隔膜ヘルニア,大手術後,
アミロイド腎症,高度の外傷や火傷など)
 
☆先天性血液凝固障害(血友病を含む)
   先天的,遺伝的に血液凝固因子が欠乏しているもの,または凝固因子に分子異常が認められるものを
いう。犬でこれまでに報告されている先天性遺伝性凝固因子の欠乏あるいは異常症としては,第T因子,
第U因子,第Z因子,第[因子,第\因子,第]因子,第]T因子,第]U因子およびプレカリクレインの
欠乏症あるいは異常症があるが,第[因子あるいは第\因子の欠乏である血友病以外はまれである。
   1,第T因子(フィブリノゲン)の欠乏あるいは異常症
     異常フィブリノゲン血症はロシアン・ウルフハウンド,コリーおよびボルゾイで報告されており,
     常染色体不完全慢性遺伝形式を示す。低フィブリノゲン血症はセント・バーナードとビスラで
      報告されており,遺伝形式は常染色体性である。
   2,第U因子(プロトロンビン)欠乏症,低プロトロンビン血症
      イングリッシュ・コッカ‐・スパニエル,ボクサーおよびオッタ‐・ハウンドで報告があり,
       常染色体劣性遺伝形式を示す。
   3,第Z因子(プロコンバーチン)欠乏症
 
      ビーグル,ミニチュア・シュナウザー,アラスカン・マラミュート,ボクサー,ブルドッグ,
      雑種犬などで認められており,常染色体性不完全慢性遺伝形式を示す。
   4,第[因子欠乏症(血友病A,C因子欠乏症)
      ほとんどの犬種および雑種犬で認められており,]染色体劣性遺伝形式を示す。血友病Aは,
      ヘテロ接合体の雌が無症候性の保因犬(キャリアー)となりヘミ接合体の雄のみが血友病を発症
      する。雌の血友病患犬(ホモ接合体)がまれに血友病の雄と保因犬の雌との交配で生まれる事が
      あるが,その頻度は極めて低い。
   5,第\因子欠乏症(血友病B,クリスマス病)
      1頭の雑種犬および16品種の犬で報告されており,遺伝形式は血友病と同様で
       ]染色体劣性遺伝形式を示す。
   6,第]因子(スチュアート因子)欠乏症
      T系統のアメリカン・コッカ‐・スパニエルと雑種犬で確認されている。常染色体優性
      遺伝形式を示す。
   7,第XT(PTA)因子欠乏症
      イングリッシュ・スプリング・スパニエル,グレート・ピレニーズ,ワイマラナーおよび
        ケリー・ブルー・テリアで報告されており,常染色体障害である。
   8,第XU因子(ハーゲマン因子)欠乏症,ハーゲマン形質,  
        ジャーマン・ショートヘアード・ポインターとスタンダード・プードルおよびT系統の
        ミニチュア・プードルで認められており,常染色体障害である。
   9,プレカリクレイン(フレッチャ−因子)欠乏症
       プードルで報告あり。                                       
 

         
犬の診療最前線・interzoo より  

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