☆膣の腫瘍 
  外陰部と膣の腫瘍は犬の雌の生殖器の腫瘍として,最も一般的なものである。その大部分は,繊維性
または平滑筋を起源とする良性腫瘍である。すなわち,平滑筋腫,線維腫,平滑筋線維腫,ポリープなどであり,
発生頻度の最も高いのは平滑筋腫である。これらの腫瘍の発生は,おそらくホルモンの支配下
(エストロゲン)により促進され,卵胞嚢腫やエストロゲン産生卵巣腫瘍などと合併する場合が多く,
そのため卵巣摘出をしたものに比べ卵巣摘出していない雌犬に多い。悪性腫瘍は少ないが,その中では
平滑筋肉腫,扁平上皮癌などが一般的である。これらは浸潤性であり,血液あるいはリンパ液を介して
転移が起こる。 
 
     ☆乳腺腫瘍  
  乳腺腫瘍は雌犬の腫瘍として最も一般的で,雌の全腫瘍の約50%にも相当している。発生は老齢犬に多く,
平均年齢は10〜1 1歳である。犬種による発生率は,プードル,イングリッシュ・スパニエル,イングリッシュ・セッター,
ポインター,フォックス・テリアボス トン・テリア,コッカ-・スパニエルで高く,チワワ,ボクサーで低いとされている。
乳腺腫瘍の発生はホルモンに依存しており,その発生率は発情期以前に避妊した雌犬では約0.5%,1回目の
発情期で避妊した犬の場合は約8%,そして2回目移行に避妊した場合では約26%になる。良性と悪性の比率は
Fifty−fiftyといわれており,その分類は以下の通りである。
   ◇乳腺腫瘍の発生率
腫瘍のタイプ           相対的発生率
   良性
線維腺腫(混合腫瘍)       45.5%
単純腫瘍              5.0%
良性の間葉性腫瘍        0.5%
   悪性
固型癌                16.9%
管状腺癌              15.4%
乳頭状腺癌             8.6%
未分化癌              4.0%
肉腫                 3.1%
癌肉腫(悪性混合腫瘍)      0.6%            
 
    ☆前立腺腫瘍 
  前立腺腫瘍の発生率は犬では低いものであるが,犬の前立腺疾患の5%を占めるといわれている。
しかしある研究機関では前立腺疾患全体の15%に相当し,嚢胞性前立腺疾患(31%)に次ぐとの報告
もある。前立腺の腫瘍には腺癌,平滑筋肉腫,移行上皮癌などが報告されているが,ほとんどのものは
腺癌である。前立腺の腫瘍で良性のものは報告されていない。前立腺癌は非常に悪性の腫瘍で隣接
臓器への侵入もしくは転移は速い速度で確実に起こる。腫瘍塊は前立腺皮膜を通して直腸骨盤の筋肉
などに侵入し,排便困難を生じたり,膀胱の頸部,尿道に侵入することにより排尿困難を起こす。転移は
腸骨リンパ節を介して肺や腰椎へ起こる傾向がみられる。
 
    ☆ブルセラ症 
  Brucella属は,1855年,D.Bruceにより分離された菌であり,ブルセラ症は重要な人畜共通感染症
(zoonosis)の1つである。ブルセラ症の起因菌は,B.abortus(ウシ流産菌),B.melitensis(ヤギ流産菌),
B.suis(ブタ流産菌)などがあるが,一般的に犬における原因菌はB.canisである。
  ◇形態と染色性
  偏性好気で大きさは0.5〜0.7×1.5umの短桿菌,グラム陰性で鞭毛はなく芽胞もつくらない。
ブルセラ症は,交尾あるいは経口的に感染し,侵入した細菌は所属リンパ節から血管に入り,各臓器や
生殖器で障害を現す。さらに妊娠犬の場合流産が生ずる。                       
 
             犬の診療最前線・interzoo より 

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