☆膀胱破裂  
  膀胱破裂の最も一般的な原因は,交通事故である。高所からの落下,腹部を蹴るなどの暴行,貫通性外傷,
無理なカテーテル挿入d)a,乱暴な触診によっても膀胱破裂が生じることがにある。まれには,尿閉,膀胱の壊死,
腫瘍も膀胱破裂の原因となる。尿貯留によ って膀満状態にある膀胱は,鈍性外傷による急激な腹部圧迫に
よって破裂することがある。このため,腹腔内への尿の漏出が起こり, 尿毒症,脱水,循環血液量減少性
ショックが生じて,適切な治療を実施しなければ生命を救えないこともある。
 
     ☆尿石症  
  結石とは,多量の結晶で構成される物質のことであり,この結石または多量の結晶が尿路内に存在し,
生体にさまざまな影響を及ぼす疾患を尿結石症と呼ぶ.結晶や結石は,尿路粘膜を刺激して血尿,頻尿,
排尿困難を引き起こし,尿路感染の素因となる。また,尿管や尿道に存在する尿石は,尿路閉塞の原因に
なることがある。尿石は,その存在部位および無機質組成によって尿石を分類すれば,犬に一般的に
認められる尿石には,ストラバイト(リン酸アンモニウム・マグネシウム),シュウ酸カルシウム,
尿酸アンモニウム,ケイ酸塩,シスチン,リン酸カルシウムがある。これらの尿石の発生率は,
ストラバイト尿石が最も高く,報告では,すべての尿石の64 〜69%であり,次いで
シュウ酸カルシウム尿石が7.4〜10%,尿酸アンモニウム尿石ガ5.3〜7%,ケイ酸尿石が
2.4〜3.5%,シスチン尿石が2.2〜3.2%,リン酸カルシウム尿石が1〜2.4%である。
尿石が形成されるためには,尿石形成成分が尿中で過飽和状態になっている必要がある。また,
尿石形成に関与している他の要因には,尿路内に尿石形成成分が十分な時間にわたって停滞
していること,尿のphが結晶形成に適している事.結石形成に必要な核となる物質が存在している事,
結晶形成を抑制する因子の尿 中濃度が低い事,がある。多量の食事性蛋白質と無機質の摂取および
犬の尿濃縮能力が,尿石形成成分の尿中での過飽和に関与し ,代謝異常や細菌感染が過飽和の原因
になることもある。以下に個々の尿石の形成原因を示す。
 1,ストラバイト尿石
  ストラバイト尿石の多くの犬には,ウレアーゼ産生菌による尿路感染が認められ,この尿路感染が
  ストラバイト尿石の形成原因になっていると考えられている.細菌によって産生されたウレアーゼは,
  尿素を分解して尿のphをアルカリ化し,尿中のアンモニウム濃度を高めることによって,ストラバイト
  尿石形成を促進する。ウレアーゼ産生菌が管よしていないストラバイト尿石の原因は,不明である。
2,シュウ酸カルシウム尿石
   犬のシュウ酸カルシウム尿石症の原因は明確にはなっていないが,この尿石の発生に管よしていると
   考えられている要因には,高カルシウム尿症,高シュウ酸尿症,高尿酸尿症がある。
3,尿酸アンモニウム尿石
  ダルメシアンif,遺伝性尿酸代謝異常が認められ,このため尿酸アンモニウム尿石症の発生率が高い。
  また,門脈体循環短絡や肝硬変といった肝機能不全が存在する犬では,肝臓における尿酸代謝機能が
  低下して,高アンモニア尿症と高尿酸尿症が症じ,尿酸アンモニウム尿石症を引き起こすことがある。
4,ケイ酸塩尿石
  ケイ酸塩の多量摂取が,ケイ酸塩尿石の主要な原因と考えられている.
5,シスチン尿石症
   腎尿細管におけるシスチンの再吸収の低下をもたらす遺伝性疾患によってシスチン尿症が生じ,
   この結果として,シスチン尿症が形成される。
6,リン酸カルシウム尿石
  リン酸カルシウム尿石は,原発性上皮小体機能亢進症,腎尿細管性アシドーシス,カルシウムおよび
  リンの過剰摂取に伴って認められる.
 
    ☆尿道狭窄   
  尿道狭窄は,尿道の外科手術,結石の除去手術,カテーテル挿入処置,外傷,炎症性尿道疾患,
腫瘍,過度の便秘,会陰ヘルニア,陰茎骨の骨折,さまざまな前立腺疾患に伴って生じることがある。
また,先天的な尿道狭窄も認められることがある。
 
    ☆尿道損傷  
  尿道損傷の最も一般的な原因は,交通事故であり,多くの場合には,骨盤や陰茎骨の骨折とともに
認められる.また,咬傷および異物による穿通によっても尿道損傷が生じ,さらに尿道カテーテル挿入時に
医原生に損傷を生じさせてしまうこともある。損傷の程度は,症例によってさまざまであり,尿道の完全分離,
裂傷,軽度の尿道欠損が生じることがある。尿道損傷後に生じる可能性が高い続発症には腎後性高窒素
血症,尿道狭窄,尿道周囲の軟部組織の腫脹がある。          
 

               
 犬の診療最前線・interzoo より

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