☆糸球体疾患 
  犬の糸球体は腎臓1個あたり約30万〜70万個存在する。糸球体は基底膜,上皮細胞,毛細血管内皮
細胞からなる。糸球体疾患 は糸球体の炎症,浮腫,壊死,細胞増殖および硬化などの病変をみる
腎実質性の疾患である。 一般に尿細管,間質を含めて糸球体炎,糸球体腎炎と称されている。
   ◇臨床症候群
 1.急性腎炎症候群:
   血尿,蛋白尿,高血圧,糸球体濾過機能低下などの急激な出現を特徴とし、感染性の場合が多い。
    ヒトでは早期発見により安静,蛋白制限,ビタミン剤,利尿剤,降圧剤などの処方のみで改善され進行が
     抑えられるが、犬や猫では通常発見が遅れるため急性腎炎症候群は激烈な症状を示す事が多い。
 2.急速性進行性腎炎症候群(急速進行性糸球体腎炎):
    血尿,蛋白尿,貧血が突然に起こる。もしくは潜在していたものが急速に進行して発現する急性腎炎の
      状態で、不可逆性腎炎に至る。
 3.反復性あるいは持続性腎炎症候群:
   蛋白尿はみられないか、もしくはわずかにみられ、またわずかに尿潜血が認められ、高窒素血症や
     尿毒症には至らない。                                               
 4,慢性腎炎症候群
    蛋白尿,血尿を伴い緩慢に慢性腎不全へと進行し、高窒素血症,尿毒症へと進行する。犬や猫に多い。
     犬の臨床例ではアデノ ウィルス感染症,子宮蓄膿症,腫瘍,全身性エリトマトーデス(SLE),
     フィラリア症に関連してみられる。ドーベルマンなどでは家族的な疾患としてみられ、サモエードでは
      本症の要因として染色体連鎖優性遺伝が認められる。
   ◇形態的分類
 形態的分類は病変部の生検もくしくは剖検で病理組織学的に確定診断される病名である。
  1.原発性
     原発性糸球体腎炎には@膜性糸球体腎炎,A増殖性糸球体腎炎,B膜性増殖性糸球体腎炎,
     Cメサンギウム増殖性糸球体腎炎(猫に多い),D管内性増殖性糸球体腎炎
         (犬では報告がみられない)E半月体形成糸球体腎炎,Fループス腎炎,LgA腎炎
          (免疫複合体による)G紫斑病性腎炎,H結節性動脈周囲炎,I糸球体硬化症などが
          あるが、原因や病態がなんであれ、炎症,損傷,浮腫,壊死,沈着などを起こした組織は
            最終的には糸球体硬化を示し、終末腎となる。
  2.糸球体疾患であるが単独の名称で呼ばれているもの。
    1)ネフローゼ症候群
     膜性糸球体腎炎が原因で重度の蛋白尿(0.4〜4.3g/dl/day),低蛋白尿[低アルブミン血症
       (3.0g/dl以下)],高脂血症(250mg/dl以上),全身浮腫を4特徴とした臨床的概念である。
         その原因としては糖尿病腎症,ループス腎炎(全身性エリテマトーデスに起因),アミロイド腎症,
           紫斑病,中毒症,腫瘍および先天性のものがあげられる。
   ◇症状および診断
   初期には無症状であり、時期経過とともに慢性腎不全と同様な症状を呈するが浮腫を伴う。また、
4特徴から診断可能であるが,特に高蛋白尿と低蛋白血症が必須条件である。血清A/G比が著しく低下し、
高比重尿(1,040以上)をみる。
  ◇治療および要点:
    a)食事療法は慢性腎不全と異なり高蛋白食,高エネルギーを原則として給与し、
         浮腫がなければ100mg/kg/day以下の食塩を 給与する。
    b)原因により異なるが、原則的にカクテル療法を基本とするが、主としてステロイドの長期漸減療法
           を行う。1r/kg/dayから開始し、症状の改善に応じ、1ヶ月毎に減少させる。
    c)高脂血症にはクロフィブラート(15〜30mg/kg/day)2〜3回分服する。
    d)感染症を起こさないよう注意する。
    e)早期治療を行えば慢性への移行を防ぐ事が可能である。
 2)糖尿病性腎症(糖尿病性腎硬化症)
    長期にわたって糖尿病に罹患していると、糸球体硬化,尿細管,間質の硝子化や硬化などが生じる.
         本症は糖尿病による二次的疾患で、慢性腎不全に進行する。
3)アミロイド腎症
    アミロイドが糸球体の基底膜や尿細管の細小動脈壁に沈着し、胃皮質から髄質まで広がる糸球体への
      沈着の程度により軽度の蛋白尿からネフローゼ症候群へと進行する二次的な疾患で、慢性腎不全に
      進行する。
4)腎性尿崩症
  腎性尿崩症の項=P.336=参照。著しい多飲多尿を呈し、抗利尿ホルモンの投与に反応しない。集合管,
     尿細管に分節状病変,硝子円柱,ミエリン像などが認められ、原発性で先天性の症例が多い。
5)腎乳頭壊死
  腎乳頭,腎稜など髄質の壊死を起こす病態で、原因は髄質への直接中毒,血管攣縮,局所的虚血などが
   あげられ、鎮痛剤,アミロイド症,ファンコニ-症候群などによることが多い。腎盂腎炎,糖尿病,間質性腎炎,
に関連してみられることもある。慢性腎不全に 移行する。
6)腎尿細管欠損
  a)ファンコニ-症候群
    原発性の疾患で遺伝的素因(バセンジ−)が認められる。ブドウ糖,リン酸塩,ナトリウム,カリウム,
     尿酸,アミノ酸などが尿細管で再吸収されずに、尿細管は欠損,拡張,線維化して、
      慢性腎不全に移行する。
  b)腎性糖尿
    血糖値は正常であるが、近位尿細管欠損により、尿糖が出現し,多渇,多尿を示す。尿糖のため細菌
      による尿路感染がみられる。血糖値が正常であること。腎機能異常がないことで診断可能であるが、
       有効な処置はない。ただし,進行することもない。
  c)腎尿細管アシドーシス
    尿細管欠損により犬でまれに起こる。高クロール性代謝性アシドーシスで、T型は水素イオンの
     分泌不足,U型は重炭酸イオン再吸収の閾値の低下に起因する。血液pHを維持するため
      炭酸水素ナトリウムを経口投与する。
 
           犬の診療最前線・interzoo より 

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