☆繊維反応性大腸性下痢
  現在のところこの疫病を表現する明確な定義づけはされていない。そもそも”線維”または”食物線維”
という用語は一つの概念的表現で、最近では論文での使用はほとんどされなくなりつつある。これを表現
する場合には、ペクチン,グァーガムなどのように具体的な、その物質名を示すようになってきている。
食物線維は消化性多糖類と不消化性多糖類に分類される。これらの主な構成単位はラムノース,
アラビノース,キシロース,マンノース,ガラクト‐ス,グルコース,ウロン酸,リグニンである。ある種の繊維質
を特定の胃腸状態に対して摂取させると、糞便の状態が改善されるといわれていることがこの病名の由来
であるが、胃腸管の状態は絶えず変化し、全身的な生理状態に強い影響を受けているため、この疫病を
究明するためのさまざまな試みは一貫した結果を得ていない。可溶性線維は結腸内の細菌の発酵作用
により酪酸,プロピオン酸,酢酸という短鎖の脂肪酸になることにより、エネルギー源となる栄養素を供給し、
結腸の環境を酸性化させる。また浸透圧によって糞便中に水分を引き込む事により、糞便の容積を増加
させる。これらの効果により線維は腸内の通過時間と、糞便の水分量を正常化する助けとなる。
 
     ☆腸過敏症候群  
  過敏性症候群ともいわれるが、この疫病はストレスを受けたときに消化器症状を起こすことから、患犬が
遭遇した心理的問題に原因があると考えられている。消化器症状を呈する疫病で確定診断のつかない
症例の中には、科学的な立証ができず、禀告から環境の変化など、患犬に起こった現象の検証により、
精神的不安定に起因すると診断されるタイプのものがある。診断に限界のある臨床現場の中で、特殊検査
をされずに消去法により類症鑑別を行い、どの疾患にも当てはまらないと思われたときに、経験上この
疫病名が使用される。ゆえにこの疫病を各艇診断する方法はない。
 
    ☆新生子ヘルペス感染症 
  新生子の死亡率の高い感染症の1つとしてヘルペスウィルス感染症があり、このウィルスはDNA2本鎖,
ヘルペス科アルファヘルペスウィルス亜科に属する。このウィルスは一般に、生後1週齡前後の新生子に急性
の全身性壊死性感染症を引き起こす。感染経路は胎盤感染か、また経産道感染である。同腹の新生子は
ほとんど同時に発病し3〜7日以内に下痢,嘔吐,
食欲廃絶,運動失調で死亡する。他のウィルスとともに
呼吸疾患も起こすと考えられている。子宮内で感染した胎子は、発育不良や死亡またミイラ変性を起こし,
出産してもほとんどが数日で死亡する。繁殖能率の悪い個体の外生殖器粘膜に水疱が認められたものの
中から、ウィルスが分離されている。                                
     
    ☆巨大結腸症 
  巨大結腸症とは、結腸の効果的な運動性がなくなり、拡張巨大化する異常のことである。通常犬より猫に
多くみられる。自然発生する場合と基礎的原因のある場合が考えられる。自然発生する場合でも先天性と
後天性に分けられるが、後天性の例の方が多い。猫の自然発生例による平滑筋を用いた研究では、
興奮伝達の後部レセプターの欠損が認められている。
  ◇原因
 巨大結腸症は、便の通過を妨げるような、機械的および機能的障害によって二次的に起こることもある。
  1.機械的障害
    骨盤骨折の不整癒合,腸管の狭窄,腸管内外の腫瘍による圧迫,まれに異物などによる通過障害。
  2.機能的障害
    代謝性疾患(低カリウム血症,甲状腺機能低下症など),外傷による結腸の神経支配の異常,
     まれに神経筋障害など。
  3.先天性
    肛門の閉鎖症,仙椎の奇形など。 
 
     ☆腸管腫瘍
  犬の消化管,特に小腸に発生する腫瘍で最も多いのは腺癌(老齢の動物に多い)と消化管型リンパ肉腫
(中〜老齢の動物に多い) である。そのほかにも、平滑筋腫,平滑筋肉腫,線維肉腫,肥満細胞腫
(犬では腸管原発はまれ)などがあげられる。また、腸管原発の腫瘍以外に他の臓器からの転移
(たとえば脾臓や肝臓の血管肉腫などから十二指腸に転移)も起こすことがある。犬の大腸に発生する
腫瘍は悪性腫瘍が多く、中でも腺癌が多い。良性腫瘍では外科的切除により治癒するが、低分化型の
癌なとの局所や、遠隔転移するものは予後不良である場合が多い。結腸,直腸に発生した腺癌でも限局性
が強く発育の遅いものであれば予後がよいものもある。消化管に発生する腫瘍の原因のほとんどは
解明されていない。

        
犬の診療最前線・interzoo より   

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