☆腹水 
  正確には腹腔内に貯留した液体を腹水asciticfluid、多量の腹水が貯留した状態を腹水症ascites という。
血管内液と血管外液の バランスは膠質浸透圧,静脈圧,リンパ管圧,血管透過性により維持されており、
腹腔内に大量の液体が貯留する
  ◇成因として、
   1)肝うっ血による肝リンパ液の増加
   2)門脈高血圧
   3)リンパ管の閉塞
   4)低アルブミン血症による膠質浸透圧の低下
   5)腎血流量の減少,腎機能の低下
   6)高アルドステロン血症
   7)抗利尿ホルモン過剰分泌
   8)血管透過性の亢進
   9)腹膜吸収の低下
  などにより上記のバランスが崩れるものと考えられる。そして図1に示すようにこれらは複雑に関連
している。たとえば腹水貯留の結 果、循環血液量の減少が生じ、これによりレニン‐アンギオテンシン系を
活性化させ、アルドステロンの分泌が過剰となる。また肝障害 が存在するとアルドステロンの不活化障害が
起こり、これらの結果、高アルドステロン血症となりナトリウムおよび水の貯留がさらに増加する。
  一般的に腹水には主原因が血流異常や低アルブミン血症により生じる漏出液と炎症による滲出液の
2種類が存在し、漏出液はさら に低アルブミンあるいは肝類洞性,前類洞性血流異常に原因する狭義の
漏出液,そして後類洞性血流異常に原因する変性滲出液に 分類される。これらの鑑別は簡単な腹水の
性状検査により可能で、腹水の原因追求に有用である。
    1)漏出液transudate
      低蛋白で細胞成分のほとんどない漏出液。持続的な門脈圧の亢進により腸リンパ管のうっ滞が
許容量を超え、腸管の漿膜      面から液体が漏出したりあるいは血液の膠質浸透圧の低下により
血管外への水分の移動が生じたもの。蛋白漏出性疾患,       肝性あるいは肝外性門脈圧亢進が
関連する。
    2)変性漏出液modified transudate
      中等度の蛋白と種々の細胞成分を含む漏出液。肝臓により下位静脈に原因した持続的肝うっ血
により肝リンパ路のうっ滞が許容量を超えて肝臓の漿膜面より液体が漏出したもの。うっけつ性心疾患,
肝疾患,および腫瘍による循環閉塞などが関連する。
    3)滲出液exudate
       炎症により血管透過性が亢進する事により生じ、高濃度の蛋白と多数の
 
       細胞を含む。化膿性および非化膿性腹膜炎や腹部癌腫症などが関連する。              
     ☆腹膜炎 
  腹腔内に生じた炎症で、種々の腹部障害の合併症として発症する。通常、腹腔は常在マクロファージ
などの働きによりある程度の 細菌感染には抵抗性を示すが、重度の感染、刺激物質の曝露や宿主側の
抵抗力、また免疫機能の低下により炎症が生じる。腹膜は 充血および浮腫がみられ、滲出液により腹膜
表面は粗造となり、かつフィブリンの折出により癒着が生じる。広範かつ激症の炎症が生じると多量の
腹水が滲出し、循環血液量が低下し、またエンドトキシンによりショックを起こすことがある。腹膜炎は
その経過から急性,慢性,原因から感染症,化学性,特発性,原因の由来から原発性,持続性,そして
その広がり方から汎発性,限局性などに分類される。
  ◇原因
  1)消化管など腹腔内臓噐の穿孔,破裂
  2)腹部手術後の合併症
  3)穿痛やその他の外傷
  4)隣接臓器の炎症の波及(胆汁,胃液,膵液など刺激物質や細菌の侵入)
 
    ☆腹腔内腫瘍
  腹腔内に存在する臓器,器官,組織を起源とする腫瘍,あるいは転移により腹腔内で増殖した腫瘍。
通常、大きな腫瘤では腹部膨大を飼い主が訴え、また食欲不振,元気消失,およびその他二次的な
症状によって来院し、触診,X線検 査,超音波検査により腫瘤病変が検出される事もある。
 
              犬の診療最前線・interzoo より  

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