☆直腸脱  
  直腸脱は直腸のT層あるいは多くの層が肛門から脱出することをいう。部分的な脱出は直腸粘膜T層
のみが脱出し、完全な脱出は 直腸の全層が脱出している。品種や性による発生率に差異はない。しかし
若い動物で発生率が高いとされている。罹患動物の多くは直 腸肛門や結腸の炎症(盲腸炎・結腸炎・
直腸肛門炎)に関連して無便やしぶりという前駆症状を示す。そのほか結腸・直腸・肛門の腫瘍,直腸内の
異物、会陰ヘルニア,膀胱炎,前立腺炎,尿道の障害や難産などに続発して直腸脱を起こす事がある。しかし
相対的なリス クは明らかにされていないものの、これらの症状をもつ動物がすべて直腸脱を発症するわけ
ではない。直腸・肛門周囲の結合組織の脆 弱さ,不適切な蠕運動による収縮,直腸粘膜の浮腫・炎症などが
直腸脱の誘因となるとされている。
 
    ☆直腸腫瘍  
  消化管腫瘍のうち、直腸,結腸の腫瘍が犬では30〜60%,猫では10〜15%を占めている。
中でもポリープ,腺癌,リンパ肉腫などがよく認められる。直腸粘膜のポリープは、通常限局性であり、
有茎あるいは固着性,非転移性 である。局所閉塞の原因となりしばしば糞便の通過を阻害する。その後に
腺癌を発症することがある。腺癌は限局性病変として発症する ことが多く、増殖性で、潰瘍化や二次感染から
線維組織が形成されて、最終的に狭窄が起こる。また直腸壁を超えて腰下リンパ節,肝臓や肺に転移する
こともある。リンパ肉腫は、猫の消化噐腫瘍の中で最も多く、回腸の括約筋に多発し、びまん性に消化管壁の
肥厚を 起こし腸管運動や吸収が妨げられる。犬ではまれに直腸に発生することがある。その他の直腸,結腸の
腫瘍としては平滑筋腫,平滑筋 腫肉腫,リンパ肉腫,形質細胞腫,線維肉腫などが報告されている。
直腸・結腸腫瘍の発生原因としては、結腸通過時間の短い低線維 食の摂取などがあげられる。低線維食は
結腸における多量の胆汁と脂肪の蓄積,長時間にわたる結腸炎などの原因となり、これらの現象が直腸,
結腸の腫瘍の発生原因として考察される。
 
     ☆肛門嚢炎  
  肛門には粘膜領域にも皮膚領域にも多くの分泌腺がみられる。このうち、肛門嚢(肛門傍洞)内外肛門
括約筋の間、肛門の側腹方に存在し、底部でにおい分泌液が生産され皮膚との移行部付近に1本の導管
をもって開口する。この導管の閉塞,細菌感染あるいはその両方によって肛門嚢自体が炎症・嚢症を起こす。
肛門嚢の疾患は猫より犬の発生率が高い。犬の肛門嚢の炎症性病変では、ほとんどの例で導管の通過障害
と細菌感染がみられる。実験的には肛門嚢の導管を血紮したり、細菌を肛門嚢に注入することによ って、
一貫して中程度から重度の肛門嚢炎が引き起こされる。自然発症例ではまず導管が閉塞し、管腔あるいは
分泌物に感染が起こることによっ て永続すると考えられている。感染した肛門嚢からはさまざまな細菌が
分離されているが、E.coli,Streptococcus Fecalis,Clostrid‐i um welchi,proteus 属などが優位を
占めている。このことは細菌感染による免疫反応と毒素の放出が病因に関与していることを示唆するが、
しかし、この部位における免疫反応が他の部位の局所感染におけるそれと異なっているという病理組織学的
研究報告は現在の 段階では皆無である。
 
     ☆肛門周囲腺腫 
  肛門周囲腺は皮脂腺の変化したものである。原則として肛門の周囲に存在するが、包皮や尾頭部背側
に沿って、あるいは仙腰部に見出されることもある。犬の肛門の周囲には3種の特殊に分化した腺があり、
その中で最も重要なものが、一般に皮脂腺の変化したも のと考えられている肛門周囲腺(perianal,circumanal 
あるいはhepatoidgland)である。肛門周囲腺から発生する腫瘍は犬の腫瘍の中でも非常に発生頻度の高い
腫瘍の一つである。肛門周囲腺は、性ホルモンによって変化を示すことが知られており、(アンドロゲン依存症)、
これらの腫瘍の成長と増殖は、血清中のアンドロゲンのレベルと関連している。本腫瘍は単発性であるが、
多発することもある。多 くは肛門の周囲に接して発生するが、包皮や鼠径部,尾根部腹側,会陰部,大腿部,
仙腰部背側面に発生することもある。肛門周囲腺 の結節性過形成は、大きさはさまざまで結節状に単発あるいは
多発するが、ときには肛門の周囲にびまん性に輪状の腫瘤として発現し 、腺腫との鑑別は困難である。
肛門周囲腺腫の多くは良性である。(肛門周囲腺腫は浸潤性も転移性もない。)
          
     ☆鎖肛
  鎖肛とは肛門が欠損している場合をいい、直腸は肛門の直前で盲管に終わっている。
このような肛門あるいは直腸の先天性異常は、クロアカ領域の異常な胚発生によるもので、
泌尿器系の奇形と関連して起こる。
 
                       犬の診療最前線・interzoo より  

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