☆ジアルジア症   
 多鞭毛虫類へクサミタ科ジアルジア属に分類される原虫であるジアルジアにより、下痢などの症状を呈する
疾患をいう。
  ◇寄生虫学的性状
  1.ジアルジアの種の分類はまだ確定しておらず、今のところ犬由来をGiardiacanis としているが、ヒトと
      家畜のジアルジアを同一種とみなし、家ウサギ由来のG.duodenalis(ヒト由来はG.lamblia)として
      扱うとする説もある。すなわちジアルジア症が人畜共通感染症かどうかはまだはっきりしていない。
  2.ジアルジアはシストとトロフォゾイト(栄養型)の2型をとる。トロフォゾイトの被嚢によりシストを形成する。
  3.シストは正常の便中にも下痢便中にもみられる。卵形を呈し長径9〜15um.短径7〜10um,2個
        あるいは4個の核を持つ。
  4.トロフォゾイトは通常、下痢便中にみられ、前部が幅広い鈍円形で後部は細い西洋梨状を呈し、
    長径10〜17um,短径7〜12um,1対の核と4対の生体毛から出る8本の鞭毛を持つ。
     虫体の腹面には吸盤があり、それで、腸粘膜に吸着し、消化産物を摂取している。
  5.感染は直接的で、シストの付いた食物や水を摂取することによる。
  6.実験感染では、感染後1〜2週間で症状が起こり、同時にシストの排泄が起こる。
     そのシストは数週間から数ヶ月の間、感染力を維持する。
  7.ジアルジア感染症の大部分が無症状である。特に成熟犬では症状が発現しない。
  8.明らかに症状を現すのは、ほとんどが幼犬で、慢性的な消化不良を起こし、粘液を伴った明るい色調の
    水様便や血液の混じった下痢便をする。また、脂肪下痢便や体重減少もみられる。
  9.あるものは突然、爆発的な水様下痢便が起こり、沈うつや食欲不振もみられ、あたかもウィルス性
         腸炎に似ていることもある。
  10.小腸寄生ではあるけれども、まれに、大腸炎に似た症状を示し、血液を伴った粘液便,しぶり,頻尿,     
    直腸脱がみられる。この場合、ジアルジアを原因としない二次的あるいは併発的な大腸疾患の存在が
       示唆される。
  11.ジアルジア症における下痢,消化不良,その他の臨床症状の病因は、さまざまな要因が関係しており、     
    腸管内容物や腸粘膜障害も原因となっている。
  12.ヒトのジアルジア症で、膵外分泌異常が報告されている。トリプシン活性および膵リパーゼ活性が
        減弱する。
  13.幼犬の場合、ウィルス,細菌,他の寄生虫の合併症を伴っていることがしばしばある。
 
       ☆トリコモナス症 
トリコモナス症の原因はPentatrichomonas hominis である。正常な犬の結腸,盲腸に寄生しており、
ほとんどが片利共生と考えられているが、ときとして下痢を主とする消化器症状を示すことがある。
◇寄生虫学的性状
    1.6〜14um×4〜6.5umの円形あるいは西洋梨実状で、5本の前鞭毛と1本の波動膜縁鞭毛と
          1個の核を持つ。
    2.P.hominis に病原性があるはっきりとした証拠は今のところない。
    3.感染は糞便の経口感染である。
    4.発育環は単純で、栄養型が二分裂して増殖する。シストステージはない。
    5.症状がみられるのは、多くが幼犬で、粘液生,血様下痢便を呈する。
      細菌あるいは他の寄生虫との混合感染が多い。  

      ☆腸の通過障害  
  腸管はさまざまな原因により通過障害を生じ、部分的あるいは完全な腸閉塞(以下イレウス)に進行
することがある。その発生原因 により、機会的イレウスと機能的イレウスに大別され、前者のうちの重篤
なものは早急な手術を要することが多い。機械的イレウスはさ らに単純性イレウスと複雑性イレウスに
分けられる。単純性イレウスは単なる通過障害であるため体液,電解質の異常は伴うものの、病変の
進行が緩除である。それに対し複雑イレウスは罹患腸管の血行障害を生じることにより、腸管壊死,
電解質喪失,脱水,増加し た細菌が産するエンドトキシン血症などを引き起こし、局所腸管や腹腔内
のみならず全身に及ぼす影響は重篤で、臨床症状の急激な悪化をもたらす。
    ◇イレウスの分類
T.機械的イレウス
   1)単純性イレウス
     a)腸内異物(腸内寄生虫,硬便,誤飲した消化不能な物質)によって
       閉塞を生じるもの。
     b)腸壁に基質的変化が起き閉塞を生じるもの。
       @腫瘍によるもの。
       A癒着によるもの。
       B外部からの圧迫によるもの。
       C瘢痕性狭窄。
       D屈折によるもの。
     c)先天性なもの。
     d)その他。    
    2)複雑性イレウス
      a)腸重責
      b)絞扼性イレウス
      c)ヘルニアによるもの
      d)その他
U,機能性イレウス(麻痺性イレウス・痙攣性イレウス)
     a)化膿性腹膜炎
     b)開腹手術後、腸間膜血管の塞栓,腹部打撲,脊髄疾患など
     c)パルボウィルス,ジステンバーウィルスなどの伝染病
     d)支配神経の障害
     e)腸管損傷,腸管内異物による反射
     f)胆石など
     g)抗コリン剤などの薬物によるもの
     h)その他
  ◇腸内異物
  1.腸内異物による腸閉塞は単純性イレウスに属する。
  2.異物の誤飲は幼犬時に多くみられるが、空腹時・遊戯中の成犬にも少なからず起こる。
  3.テニスボール・タオルなどの布類,ヒモや糸,石,草葉,骨形のチューイングガム,プラスチック製品,
     大量の腸管内寄生虫,その他消化不能のあらゆる物が、通過障害の原因となりうる。
  4.たいていの異物は大事にいたらず糞便とともに排出されるが、いったん閉塞を起こしてしまえば
       外科的処置を施す必要がある。
  5.ある程度の長さのヒモ状物を誤飲した場合、罹患腸管はアコーディオン状に折りたたまれた襞、
     あるいは重積を形成し、腸間膜側の腸壁を裂開してしまうこともある。
  6.異物が腸管腔を塞いでしまった場合、内科的治療を施しても奏功することは極めてまれである。  
  ◇腸重積
  1.腸重積は複雑性イレウスに属する。
  2.腸の一部が他の部分に嵌入して通過障害を引き起こすものである。
  3.回盲部での発生頻度が高く、他の部位で複数みられることも珍しくない。
  4.腸の過剰運動,腸炎,寄生虫などに継発することもあるが、原因が不詳であるため予防は困難である。
  5.通常、1歳未満の幼若犬で多発する。
V,その他の原因による通過障害
 
  1.嵌頓
    1)複雑イレウスに属する。
    2)鼠径ヘルニア,臍ヘルニア,腹壁ヘルニア,横隔膜ヘルニア,腸間膜ヘルニアなどの外ヘルニア,
      あるいは内ヘルニアの内容に腸管が嵌入し、血行障害を起こすものをいう。
  2.腸捻転(腸管軸転不通症)および腸間膜の捻転
    1)複雑性イレウスに属する。
    2)空回腸で生じやすい。
    3)犬ではまれで、部分的閉塞であることが多い。
  3)腫瘍,癒着,その他。
    1)単純性イレウスに属する。
    2)腸原発の腫瘍あるいは周囲臓器(卵巣,脾臓,膵臓,肝臓,前立腺など)の腫瘍により腸の
       通過障害が起こる。また、腸管の損傷・炎症,不注意な腸管切除・腸管切開術後の狭窄,腹膜・
       周囲組織への癒着でもイレウスを生じる。
    3)部分的閉塞であることが多い。                                  
 

                    
 犬の診療最前線・interzoo より              

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