☆感染性心内膜炎 
  弁および心臓の内面を覆っている心内膜に感染が起こる疫病で、主に大動脈弁と僧帽弁が侵される。
原因菌としてはStreptococcu s spp.,Staphylo-coccus spp.,Escherichia coli,Corynebacterium 
spp.,Pseudomonas aeruginosa,Erysipelothrix rhusiop athiae,aerobacter aerogenes などが
一般的であるが、その他の細菌も原因菌になりうる。ヒトにおいては真菌,リケッチアおよびクラミジアに
よるものも報告されている。病変形成因子としては以下のようなものがあげられる。
  1.歯,骨,肺,扁桃および前立腺などにおける感染や各種外科処置,カテーテル操作などに
      由来する一時的または持続的な菌血症。
  2.以前に損傷を受けた弁病変(ただし僧帽弁閉鎖不全症などの粘液腫性病変とは関連しない)や
     逆流ジェット病変の存在(ただしまったく正常な弁にも本症は起こる。)
  3.損傷部位への血小板-線維素性血栓の沈着。
  4.病変部への細菌の粘着能。
  5.血中の細菌に対する高い抗体価(細菌の沈着に促進的に働く場合と抑制的に働く場合がある)
  これらの結果、主に大動脈弁と僧帽弁の基部に疫状病変ができ、これによって弁の閉鎖不全が起こり、
左心不全が発現する。さらに病変が広がって腱索断裂を起こしたり、膿瘍形成や心筋炎を起こす 
こともあり、さらには刺激伝導系も侵して不整脈を引き起こす。心臓以外では疫状病変から細菌を
含んだ血栓剥がれ落ち、全身性の塞栓症,梗塞および転移性の感染症を引き起こす。臓器としては
腎臓と脾臓が最も塞を起こしやすいが、心臓,脳,小腸にも起こり、それぞれの臓器機能不全の症状を示す。
椎間板脊椎炎,敗血性関節炎,リウマチ性疾患,糸球体腎炎,尿路感染,血中の抗核抗体や免疫複合体の
存在もみられることがるが、これらは本症の原因なのか結果なのかは定かではない。
                                    
       ☆拡張型心筋症  
  拡張型心筋症(DCM)は心室の収縮力の低下と拡張を特徴とする疾患群で、大型〜超大型犬種
(ドーベルマン・ピンシェル,グレートデン,セント・バーナード,ボクサーなど)に多発する傾向がある。
例外的にスパニエル種も罹患しやすいことが知られている。雄は雌に比べて4倍も多く発症し、発病の
平均年齢は4〜6歳であるが、若齡から老齢まで幅広く認められる。心筋症は原因不明の心筋の病気と
定義されることから、その原因は不明だが一部の症例では(アメリカン・コッカ-・スパニエルではタウリンと
恐らくカルニチン不足が原因),微細な栄養分の不足を補うと回復することが知られている。
 
      ☆肥大型心筋症
  肥大型心筋症(HCM)は左心室の肥大による伸展性(コンプライアンス)の低下を特徴とする疾患群で、
現在のところ報告された症例数が少なく、十分な検討ができていないが、雄に多く、シェパードに比較的多い。
年齢は若齡〜老齢までさまざまである。原因は不明(腎性高血圧による二次性のものは通常本症には
入れない。)だが、ヒトでは常染色体性慢性遺伝することが知られている。
 
     ☆犬糸条虫症
   犬糸条虫症はカによって媒介されるDiro-filaria immitis の寄生により、肺,右心系に障害を与え、
肺性心や右心系のうっ血性心不全を起こす代表的な疾患である。わが国では北海道の一部を除き全国的に
発症がみられる。好発犬種はないが屋外飼育犬,大型犬,雄犬に報告例が多い。犬糸条虫が肺動脈に
寄生すると血管内膜炎,血栓,肺実質の障害が起こる。障害の程度は成虫の寄生数,感染期間,宿主の
免疫反応などにより左右される。肺血管や肺実質の障害に伴い肺血管抵抗が増大し、肺高血圧に陥る。
(肺性心)また、右心系は圧負荷により偏心性肥大が起こり、進行すると右心不全に陥る。また成虫の
寄生数が多い場合は、突然虫体が三尖弁周辺部に移行し急性心不全を引き起こすケースもある。
     (大静脈症候群の項=P.120=参照)。
 
     ☆大静脈症候群
   急性発症型の犬糸条虫症で、虫体が肺動脈から三尖弁口部付近に移動することにより、三尖弁閉鎖不全
に伴う循環障害が起こり急性肝不全や腎不全を引き起こス病態をいう。犬糸条虫性血色素尿症あるいはcaval syndrome と同一の病態である。臨床的には突然の元気消失や虚脱,血色素尿,呼吸困難,腹水などの症状が
みられる。典型的なタイプは比較的若い犬で多数の虫体寄生により発症し、冬〜春季にかけて多くみられていた
が、最近では老齢犬においても虫体が少数寄生し、大静脈症候群(VCS)様の所見を呈することがある。血色素
尿の発生機序はまだ十分に解明されていないが、赤血球の機械的脆弱性の亢進や、虫体および異常な弁運動
による血液の乱流などが原因とされている。  
 

          
 犬の診療最前線・interzoo より  

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