☆動脈管開存症
  
  動脈管は、胎生期には血液の大部分を肺動脈から下行大動脈に運搬する役目を果たしている血管
である。しかし、出生後、肺呼吸が開始されると不必要になり、通常数日後に閉鎖する。動脈管開存症
(PDA)は、この動脈管が出生後も
閉鎖せず開存した状態をいう。先天性心疾患の中では最も発生頻度
が高い。プードル,コリー,シェットランド・シープドッグ,ポメラニアン,ジャーマン・シェパードによくみられ、
雌に発生頻度が高い。
   ◇血行動態
 血液は動脈管を通じて大動脈から肺動脈へ収縮期,拡張期ともに短絡(左-右)が起こるため、
肺循 環量が増加し左心房に容量負荷を生じる。動脈管が太く短絡量が多い場合は早期に左心不全を
招来したり、まれに肺高血圧を生じ逆短絡(右-左)となり、Eisenmenger 化していく。                                          
       ☆心房中隔欠損症
  心房中隔欠損症(ASD)は心房中隔の欠損を有する疾患であり、欠損孔の部位により主に
一次中隔型と二次中隔型に分類される。前者は発生学的に心内膜床欠損に含まれる。犬では
二次中隔型の中でも卵円窩型が最も多い。他の心疾患との併発頻度は高いが、
単独での発生は比較的まれである。
   ◇血行動態
 血液は欠損孔を通じて左房から右房へ流れるため、右心系に容量負荷を生じ右心房,
右心室は拡 張する。心室中隔欠損症や動脈管開存症が合併すると左-右短絡量が増加し
症状が悪化する。また、重度の肺動脈狭窄症や肺高血圧症が合併すると右心房圧が上昇し、
右-左短絡が生じチアノー ゼが発現する。
 
     ☆心室中隔欠損症
  心室中隔欠損症(VSD)は心室中隔の発生段階での異常により、心室中隔に欠損孔が生じ
心室間で左-右短絡を生じたものをいう。解剖学的な分類は欠損孔の位置によるが、大動脈弁下
にみられるVSD、すなわち心室中隔膜性部のVSDが最も多い。本疾患は単独でも起こるが、
他の心奇形とよく合併し、ファロ-四徴症の1つの要素として認められる。
   ◇血行動態
   心室間の短絡量は欠損孔の大きさ,位置,両心室間の圧差などによって異なる。
  欠損孔を通じて左から右へ短絡した血液は、肺循環量を増加させ、左心系に容量負荷を加える。  
短絡量の少ない場合は血行動態にほとんど影響しないが、多い場合には左心不全徴候が発現する。また、
肺血管抵抗が増大し右心室内圧が左心室内圧を超えると、右-左短絡となりチアノーゼが発生する。
 
          ☆肺動脈狭窄症
  肺動脈狭窄症(PS)とは左右心室間の短絡を伴わない肺動脈流出路の狭窄である。狭窄部位
により弁上性,弁性,弁下性(漏斗部性)に分類される。弁尖が融合し、肥厚し、中央がドーム状に
開口している弁性タイプが最も多く、次いで弁下性タイプがみられる。本疾患は他の心奇形
(心房血中隔欠損症や心室中隔欠損症)と合併する事が多く、肺動脈狭窄単独のものを特に
純型肺動脈狭窄症と呼ぶ。先天性心疾患の中では動脈間開存症に次いで発生率が高く、
特にビーグル,ジャーマン・シェパード,イングリッシュ・ブルドッグによくみられる。
  ◇血行動態
 右心室流出路の狭窄のため、右心室は圧負荷を受け求心性に肥大する。肥大の進行に伴い
右心室圧は上昇し、重症例では左心室圧を超えることもある。一般にチアノーゼはみられないが、
右心不全に伴い肺血流量が減少したり、心房中隔欠損が合併していたりすると、チアノーゼが発現する。
 
             犬の診療最前線・interzoo より  
 
 
    
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